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奈良地方裁判所 昭和55年(わ)55号 判決

本籍

鹿児島県鹿児島市吉野町一、四〇〇番地

住居

奈良県奈良市右京三丁目一七番八号

株式会社宝船代表取締役

山下恒俊

昭和一二年一月一五日生

右の者に対する頭書被告事件について、当裁判所は、検察官宮下進一出席のうえ審理して次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年六月及び罰金一、八〇〇万円に処する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、株式売買及び株式情報提供の事業を営んでいたものであるが、右事業に関し所得税を免れようと企て、

第一  昭和五二年分の総所得金額は一億六、五一八万一、四四九円、これに対する所得税額は一億八五二万三、七〇〇円であるのにもかかわらず、株式取引益並びに特別指導料等の雑収入のすべてを除外して得た資金を他人名義等による株式取引資金として管理運用するなどの不正手段により、その所得金額のうち一億六、〇五四万六、四八三円を隠したうえ、昭和五三年三月一四日奈良県奈良市登大路町八一番地所在の所轄奈良税務署において、同署長に対し、総所得金額が四六三万四、九六六円、これに対する所得税額が四四万七、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よって右五二年分の正規の所得税額一億八五二万三、七〇〇円と申告にかかる総所得金額に対する所得税額四六万三、〇〇〇円との差額一億八〇六万七〇〇円をほ脱し、

第二  昭和五三年分の総所得金額は四、九一八万八、六七九円、これに対する所得税額は二、三三八万六、四〇〇円であるのにもかかわらず、前同様の不正手段により、その所得金額のうち四、七二三万八、六七九円を隠したうえ、昭和五四年三月六日右奈良税務署において、同署長に対し、総所得金額が一九五万円、これに対する所得税額はなく還付を受ける源泉所得税額が七万九、二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よって右五三年分の正規の所得税額二、三三八万六、四〇〇円との差額二、三四六万五、六〇〇円をほ脱し

たものである。

(証拠の標目)

判示各事実について被告人の当公判廷における供述および検察官に対する供述調書のほか、記録中証拠等関係カード(検察官請求分)に記載されている次の番号の各証拠

判示全部の事実について

7、8、10ないし15、17、19ないし23、25ないし31、36、43、47、50、61ないし72

判示第一の事実について

1、3、5、9、16、18、24、32

判示第二の事実について

2、4、6

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、情状により所定刑中懲役刑と罰金刑とを併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、罰金刑については所得税法二三八条二項、刑法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で、被告人を懲役一年六月および罰金一、八〇〇万円に処し、右罰金を完納するときができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとし、訴訟費用については刑事訴訟法一八一条一項但書を適用して被告人には負担させないこととして、主文のとおり判決する。。

昭和五五年五月二三日

(裁判官 三好吉忠)

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